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題名
小豆島 The GATE LOUNGE
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所在地
香川県小豆郡土庄町
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用途
店舗兼ラウンジ
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構造
木造
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階数
地上1階
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敷地面積
約 39000㎡
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建築面積
81.9㎡
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延床面積
81.9㎡
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建築・監理
VUILD(担当/秋吉浩気 中井彬人 中澤宏行)
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コンピュテーショナルデザイン
VUILD(担当/伊勢坊健太)
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設計アドバイス
ondesign(担当/西田司)
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構造
Graph Studio(担当/荒木美香 氏岡啓威)
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環境設備
スタジオノラ(担当/谷口景一朗 藤村真喜)
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照明
TILe(担当/岩壁泰良)
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施工建築
マル喜井上工務店(担当/井上匡都 中野弘樹 鈴木光晴)
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施工大工
林敬庸 中嶋智之 仲子竣祐
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施工板金
NSシートメタル(ばんきんらいふ)(担当/天野直樹 天野園美 天野丁)
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協力
須田竜二 須田君子 森賢一 青木大介 松原鉄 林愛徳
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木材加工
VUILD(担当/野田慎治 花田康史 小川慎平) 小豆島ヘルシーランド(担当/柳生陽子 室谷雄作 藤枝基輝 大須賀嵩幸)
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木材乾燥監修
VUILD(担当/井上達哉)
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製材
丸島産業(担当/谷口雅直)
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素材塗装
中村塗装工業所(担当/中村修平 高須浩輔)
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行為資源開発
田中正洋
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設備
丸島ハウジングサービス(担当/高橋秀年)
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電気
濱本電気(担当/濱本龍太郎)
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建具
森本建具店(担当/中村和彦 山本賢二)
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ガラス
上田硝子店(担当/上田浩之)
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基礎石
西山石材(担当/西山紀義)
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位置出し測量
安井建設(担当/安井秀文 原田康史)
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家具製作
井上製作所(担当/井上理輝 赤平真史)VUILD(担当/小西陽二 西村俊貴)米澤製材所(担当/米澤政幸 髙山一 坂東理史)
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施工協力
小豆島ヘルシーランド(担当/柳生敏宏 柳生忠勝 角田尚記 佐藤秀司 磯田周佑 八倉巻絵美 柳生陽子 池本智恵 室谷雄作 柳生智英子 他 役員・従業員一同)
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竣工写真
太田拓実
「小豆島 the GATE LOUNGE」が、香川県の小豆島に竣工し、オリーヴの栽培・研究開発・製造・販売を行う、店舗兼施設としてオープンした。同施設は、製品やサービスの体験だけでなく、オリーブの栽培・搾油過程を見学し、滞在を通してオリーヴを育んだ気候・風土を五感で楽しむことができる、そんな体験に誘うはじまりの場所としてのゲートの機能と、ホストとゲスト、ゲスト同士が気兼ねなく交流できるラウンジ機能を備えている。
①プロジェクトのはじまりと特徴
本プロジェクトは、設計者とクライアントが共に木造建築を作り上げる新しい建造の在り方を提案すると共に、島の資源を最大限に生かすことはもちろん、デジタルファブリケーション技術を駆使することで施工・デザインのクオリティを維持している点を特徴にしている。
②離島に木造建築をつくる
小豆島は大阪から西へ180km、西日本に位置する離島である。この島で木造建築をつくる場合、島内に木材の乾燥機や加工施設がないため島内の木材は活用できず、本州から輸送しなければならないため、通常に比べコストも時間もかかるという課題がある。
そこでわたしたちは、ビニールハウスを木材乾燥機として改造し、小型のCNC加工機を設置することで、島に現存するヒノキを資源として生かす試みから着手した。
③施主と共につくる
本プロジェクトでは、設計者とクライアントが共に木造建築を作り上げる新しい建設の在り方を提案している。プロジェクトの皮切りとして、まずは施主自ら島を巡り石材と木材を調達するところからはじめ、材料の輸送、皮むき、製材、塗装なども建築家・職人からの指導の下、施主自ら行った。建造プロセスを施主が主体となって進めることによって、建物に対する自負・愛着が生まれることはもちろん、地域の人々にとっても、島内の資源を活用し建築が作れるという大きな見本の役割を担った。結果的に、材料調達元からのカーボンフットプリントは最小限の半径5.5km以内に収まった。
④デザイン
「小豆島 the GATE LOUNGE」の敷地は海に面し、建物はシンボルである樹齢千年のオリーブの木を包むように置かれている。そのため、建築の設計にあたっては、風と光の方向が注意深く考慮された。日照と風の流れはサステナビリティ・エンジニアによってシミュレーションされ、建物の形状は3方向に広がる形態をとることによって自然換気を促し、多方向からの敷地への動線を促している。
壁面には3層の採光、換気用のスリットが設けられ、晴れた日には建物中央部でも500lx程度の自然採光が期待できる。また、三又に分かれた建物形状は海からの風を捉えるウィンドキャッチ効果も有しており,捉えた風をスリットから室内に取り込むことで、出入口の扉を閉めた場合にも、0.3m/s前後の緩やかな気流感を常に感じられる。
⑤制作
このプロジェクトのチャレンジは、使い手のための空間のデザインや環境的なデザインをするということだけでなく、構造や壁を組み立てるための部材を、CNCマシンで加工するための切削データを正確に作成することであった。このような複雑な製作は、以前は熟練した大工のみが行っていたが、デジタルファブリケーション技術により、誰でも加工できるようになった。
基礎にはコンクリートではなく、この地方で採れる花崗岩の巨石を使用し、構造躯体に使用される700本のヒノキの丸太も、すべてこの地域で伐採されたものである。構造部分においては、複雑に仕口切削された部材を事前に組み立て、アーチ形状の丸太の断面ユニットを制作した。丸太の半割材と太鼓材を交互に組み合わせ、ボルト接合で応力伝達する。丸太径は小豆島で取りやすい元口径150 ~200mm、長さはShopBotの加工性から2.5m以下を目安とし、これらの条件下で、鉛直荷重に対して軸力系に近くなること、スラストを軽減することを目指して形態を決定した。