• 設計

    VUILD株式会社

  • 構造

    金田泰裕/yasuhirokaneda STRUCTURE

  • 照明

    TILe/岩壁泰良

  • 施工

    VUILD ルーヴィス

  • 延床面積

    32.34㎡(対象部分)

  • 階数

    対象部分:地下1階(全体:地下1階 地上2階)

  • 構造

    木質パネル工法

  • 工期

    2021年11月~2021年12月

  • 撮影

    黒部駿人

世界的に著名なバリスタからの依頼で制作した茶室「琲庵」。

利休の待庵がブリコラージュによって生まれたように、野性的思考に基づき、即物的にものをつくることを考えた。設計の主体性を理性ではなく完成に委ね、直感的におもいついたものを統合し、それを何かに見立てながら客観的に分析する。その際に生じる論理的飛躍を迎合しながら、直感と客観的分析を反復し設計を進めた。

所与の空間を茶室へと改修するのではなく、自立する方丈の庵を置き、スケルトンと庵の間に生まれた4つの隅に、待合・床・水屋・躙口を配置することで、室内を庭園化した。ただ、庵を自立させたことで内装制限を受け、不燃木を使わざるを得なくなったため、コストや加工性を考慮して高圧木毛セメント板を構造に採用することになった。

また、空間との相対性を鑑みて、庵の面を取り曲面を六角形のセメント板で離散的に充填することにした。パネル同士を頂点で繋いぐことで接合部が茶釜の「あわれ」に見え、さらにパネルを「虫食い」に抜くことで、非対称性が強調されるだけでなく、窓が生じ内部に間接光が差し込む。

また、鉄器にあやかり板を黒く塗ってみると、3次元的な面取りの影響か待庵の室床のような空間的広がりが感じられた。次第にセメント板が竹小舞のように思えてきたため、この上に鉄粉と木粉を塗り込んだ錆びる塗料を塗り込み、土壁の表情に近似させた。

このように、手探りの行為がもたらす偶発性に乗っかり続けることで設計を進め、<琲庵・はいあん>と名付け<待庵・たいあん>の韻を踏んでみることで、その精神性の写しを図った。